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『たまねぎ剣士』


「ただいま帰りました、っと」
両手で抱える程の麻袋を身体と右腕で支えて、何とか家の扉を押し開く。
少し行儀が悪いけど、勘弁してくれよ。

「お帰りなさい、トレロ」
あら、随分な大荷物ね?どうしたの?
「農家のおっさんから、母さんにって渡された」
不揃いだけれど採れたて土付きの玉葱がいくつも詰められている。
玉葱を取り出した袋の下には、同じく不揃いの馬鈴薯や不思議な形の人参が。底にはなんと、南瓜まで。



俺の家は7人家族。
男ばかりの4兄弟は食べ盛りで、じっちゃんに父さんもいる。日々のやりくりは大変だろう。
そう言う事情を知っている母さん達の知り合いが、よくこうして規格外の食材を分けてくれる事で家計はかなり助かっているのだ。




「ママー!あっ、お兄ちゃんも、ただいま!!」
一番下の弟が学校から帰ってきた。
膝小僧や指が、靴が、良く見ると服の裾まで乾いた土で汚れている。

「あのねえ、今日は『いもほり』だったんだよ!」
大きいのがとれた!さすがオレ!
自画自賛しながら、通学カバンをひっくり返してサツマイモ(大物)をいくつも机の上に転がす。
「あら、美味しそうねえ」

コイツは……まずは風呂か。

「ニーナさん、ただいま戻りました」
母さんに買い物を頼まれていた上の弟も帰ってきた。
「兄さん達も、今日は早かったんだね」

乳製品に卵、香辛料。タイムセールで生鮮肉。

「ピアノおかえりー!ねぇねぇ、お菓子はないの?」
そこまでの予算はない事が分かって(?)いても、つい思った事を口に出す。





泥だらけの猫をひんむいて、首根っこを掴んで風呂に叩き込む。
頭から湯をかけて、まずはシャンプーを手に取り、髪に絡んだ土埃を落としていく。ついでに頭皮をマッサージ。
次に浴用液体石鹸を染ませ泡立てたスポンジで首から肩、背中を擦る。そのまま二の腕辺りまでも入念に。

「もうっ、オレだって1人であらえるよー!」
じたばた。
なら、前側と足は自分で洗えよ?

「黙ってろ!口に泡が入るぞ」
キッチンは母さんの城だ。




「………………」
風呂ってこんなに疲れる物だっけか?

腰に巻いたタオルを剥かれかけながらも、辛うじて死守に成功。軽く汗を流すつもりが余計に汗をかいたような大乱闘だった。

浮遊大陸06:『たまねぎ剣士』
皮を剥くと刺激的。