TITLE-FF3

『カエル必須パーティー』


「よーし、もぐるか?」
「できっこないよ!」
「カエルにでもならなきゃね……」


山間の谷に集落を築いて暮らしている、グルガン族、と言う目の見えない預言者達に示された「運命を変える男」の進むべき道。
アーガスの古城から眺めて北東の空を貫いていた花瓶の様な形の塔。見知らぬ模様に見知らぬ素材の高層建築物。

『オーエンの塔』
……第一階層

オーエンが地域名なのか他の何かなのかは全く分からないが、「おれの運命が待っている」と真剣な様子を見せた道連れ

入口が厳重に封鎖されていると言う様な事もなく、 突き当たりの行き止まりまで探したが、上層への道が見当たらない。
少年達(と、何もない空間から偶に現れる魔物)の他に目につく存在と言えば、先程から通路のあちこちで見かける蛙達位の物だ。 人を恐れないのか自由気ままに過ごしている彼等は試しに捕まえてみても、のんびりとした調子でケロケロと鳴くだけ。勿論、言葉は分からない。
そして、カエルにとっては快適な環境なのであろう、やけに水浸しの床。 観察している内に水がどこからか流れて来ている事を掴み、纏わりつく抵抗の強くなる方へ一行は足を向ける。

「ねえねえ、穴があるよ!」
トーザスの抜け道よりは狭そうだけれど、今も水をとめどなく流し続ける穴のような場所が有る。
精々ブーツの先位の大きさ。しかしミニマムではきっと、潜る前に溺れてしまう。

周囲の壁は相変わらず硬い素材で、とても壊せそうにない。
「こりゃあ、広げるのは無理か。お前さんたち……どうするんだ?」
お手上げポーズの【道連れ】(兄貴分の姿)が、何かいいアイデアは無いかと意見を求めてくる。

「あのおっさん達に貰った魔法があったよな……トード、だっけ?」
これを持って行くが良い、とグルガン族から譲られた白魔法のオーブ。


一番幼い白魔導師の少年が、目を輝かせて腕捲り。新しい魔法を試してみたいと言う好奇心に引き摺られる様に、呪文を詠唱する声の調子も上擦っている。
えいっ!
「トード!!」
悪ガキの手にかかれば、戒めの魔法もなんのその。

くすぐったい感覚。視界が一瞬歪んで、低くなって。
手を広げてみればまあるく膨らんだ吸盤、指の間に薄い膜。少しじめっとした肌。
ぽってりしたお腹は少し白くて、小さな子供みたい。

辺り一面、雨の日の匂い。嫌いじゃない。


「よしっ、全員カエルになったな!」
「行くよー!」

赤色・緑色に桃色、何ともカラフルなゲコゲコトリオはダイブを決行。
青色は……もうこのまま引きずって行くか。
旅の道連れ(カエル)が気の毒そうな目で見つめていたのは、名誉の為に黙っていてあげような。


「はー、死ぬかと思った……」
思った通りに上への階段を見つけて、意気揚々と進んだ先で
ゲコゲコ一行は魔物に見つかってしまった。

ろくに魔法も使えない、武器も持てない。体当たりしてもまるで威力が出ない。
「ねえ白魔道師、●●のつえは?」
同じように『攻撃力が激減する』小人の時に使った、杖をアイテムとして使う戦法はどうかと問いかけるも、
「ミスリルロッドと『もえる』しかないよー!!」
なんてこったい。

「なんきょくのかぜは?」
祭壇の洞窟で拾って、その後も念の為に取っておいた筈だけど、
「おおねずみの時に使っちまったよ!」
こりゃ流石に戦えないよな、と諦めて何とか物陰まで逃げ切った。危ない危ない。

くっ、こんな事ならサリーナに会った時にキスしておけば良かった……!

えっ。
道連れ(カエル)の衝撃的な告白に少年達の時間が一瞬止まったのは内緒。


「トードっ!」
貴重な魔法力を消費する形だけど、カエルの姿で全滅するよりはずっとマシだ。

カエル+道連れはこうして(否応なく)、再び人の姿を取り戻した。



「ヒッヒッヒ……」
毒林檎を差し出しそうな怪しい声が時折、塔の中に響き渡る。

階を跨ぐ毎に何かを思い出していく道連れと共に、少年達はこの更に上に登って何かを確かめなければならない気がする。
中々の長丁場になりそうだ。知らない仕掛けに初めての環境は、育ち盛りの年頃と言えども流石に疲労が溜まる。
『5F』で謎の声曰く『永遠に彷徨い続けるのだ』と挑発された罠を、道連れがどうにか解いた所で、今夜の休息を取る事にした。

「なんか、飯がショボくねーか……?」
いつもならもう少し量も品数も有るのに、なんだか物足りない。
おい、今日の料理当番は誰だったっけ。




「ドワーフ泳げない!角、取り戻せない!」
デッシュの安否を案じながらも、『約束通りに』渦が消えた北の海峡をエンタープライズ号で抜けて、
前々から気になっていた東の村に寄り道を。そしてまた、海を越えて辿り着いた孤島。

少年達よりがっしりした身体の、のんびりした話し方の人達『ドワーフ』が住む地下集落。
『北にキラキラ光る塔が有ったけれど、地震の後に消えた』
大事そうな話だけど、ドワーフ達には別の気掛かりがあるらしい。

グツコーなる盗賊が宝物の『氷の角』を盗んで、逃げていったそうだ。
逃亡先は……

『地底湖』

その名が示す通りの、地下洞窟内に形成された湖沼地形。広がる『先』には抜け穴等は無い。
ドワーフ達は『泳げない』から、詳しい調査は出来ていないのだとか。

「よーしっ!早速もぐるか?」
「できっこないよー!!」
「カエルにならないと……」

繰り返される悲劇の予感(※約1名)。

なあ、もしかしてお前の先祖はドワーフだったのか?
もやしだし、ドワーフの『あしゅ』じゃない?

「…………」
深く被った帽子が影となり、彼の表情を窺い知る事は全く出来ない。


かーえーるーの、きーもーちー!!
「トードっ!!」



シルエットが一気に小さくなり、現れたのは赤色・緑色・桃色のゲコゲコトリオ+青色の礫ゲコゲコ体。
まだ爪先が水に触れてもいないのにな。

なあ、この状態って鎧とかはどうなってるんだ?
赤いカエルが疑問を呈する。

「『そうび』は、外れてないよ!」
緑のカエルは道具袋の中身と、武具の数が合うかを確認した。
「元に戻った時に裸だと、恥ずかしいよね」
きっと魔法開発の段階でそんな思いをした人がいたのだろうと、桃のカエルが微笑んだ。


「れっつすぃーむ、だぁいぼっおうけぇーん♪
「あーめあーめ、ふぅれふぅれー、あまざらしー♪」
「しそら・しれど・どみれ♪」
水を浴びると訳もなく歌いたくなる、不思議なマジック。

「…………」


「折角だからこいつ、ボードにしようぜ」
やけに平たいうつ伏せ。微妙に器用。
滑らせるように水に浮かべて、試しに乗ってみても上でジャンプしてみても中々沈まない。
なあ、お前らも乗ってみろよ!

「キラッキラにかざってあげなきゃ!」
吸盤にマニキュアを、後頭部?には蝶々結びのリボンを。
大サービスでハートと水玉のもようも、描いてあげよう。勿論水かきの間にも。
白魔道師の少年が鼻歌を歌いながらボードを飾り付けていく。

「二人とも、余りやりすぎない方が……」
そう言いながらも黒魔道師の少年が、羽飾りとラメ入りフレークで煌びやかに装飾を足していく。

ねえ、何の忘年会かな?


「よし、全員、カエルだな!」(※約1名除く)
「行っくよー!」

地下洞窟の更に地下、深く暗い水の下へ。目標、盗賊退治。
3匹のゲコゲコが身を投じた。
煌びやかなデコボードは赤ゲコゲコの背中に括り付けて強制連行。



「なんだ、空気があるじゃん」
泳げないドワーフでは知る事が出来ない、探索も難しい空間だ。
「盗賊はみずうみの下に空気があるのを知っていてにげこんだ、って事?」
白魔道師の推理に戦士と黒魔道師(※カエル)は「なるほど」と理解を示した。


『おとめのキッス』と言う、少年達には恥ずかしい名前の薬で楽しいゲコゲコタイムはおしまい。
つまり、水遊びもお歌も一旦おしまいだ。


「つえは装備しているよな?」
「オレがこおりとほのおで、袋の中にひかりのつえがあるよ!」
『オーエンの塔』の時の様な逃亡劇は避けたい。失敗から学んだ知恵である。

花の香りと白い煙がカエル達を包む。
気がつくと馴染みのある体に戻っていて、戦士の少年はストレッチを試みた。
思う通りに思う部位が動いて、一安心。よし、違和感は無いな。


「なあ、この薬は礫●体にも効くのか?」
「まず、掛けてみないとね……」
黒魔道師の少年が、女の子を模した蓋を捻って開けて、某デコボードにそっと薬の雫を垂らす。

もし駄目だったら、フェニ尾案件か?放置してうっかり割られたら更に面倒だしな。
戦士の少年は魔物の気配を探りながら、物騒な事態への懸念と懐具合とを比べている。


トリオの時と違って花の香りはしない・・・けれど、
やがてトリオの時と同じように、白い煙が上がる。
「あ、効いた」


外套にハートと水玉模様のペイント、髪に蝶々結びのリボン。手の爪にマニキュア。
帽子の羽飾りが少し増えているけれど、目を回しているけれど。
ひとまず、姿はいつもの赤魔道師の少年に戻った。

「おーい、起きろー、飯作ってくれー」
戦士の少年が相棒の頬をつまんでみる。少女漫画としては失格描写な渦巻目が、中々治らない。

「早くおきろー!しろアスパラって呼ぶよー!」
白魔道師の少年は腕を引っ張ってみるが、反応はまだ返ってこない。

「ねえ、何か違うのが混ざっていない?」
良い問いかけが思い浮かばない黒魔道師の少年は、仲間達の言葉に首を傾げた。




この『おふざけ』の代償が大層高くつく事を、陽気なトリオはまだ知るよしもない。


浮遊大陸09:『カエル必須パーティー』
ゲコゲコ。